たまたま日記

たまにしか書かないに日記         遊びをせんとやうまれけむ   戯れせんとや・・・・

まるごと稲城①



 鬼のような寒さの日が2日ばかり続いたと思ったら、一転して春を欺く日和。


 春がきたんじゃあ、よいしょ、出かけることにすっか。物言わぬは腹ふくるる業、歩かねば腹出る業だ。さてそこで、どこへ行こうか? 想うに、多摩地方の多摩川の北側に住む者は川向こうの南側をあまり訪れない傾向がありはしないか?


 そうだ、稲城市へ行ってみよう。地図によれば、市の北半分は住宅地で、南半分、川崎市と接する部分は丘陵地帯、その真ん中あたりを三沢川が流れている。三沢川をよれよれよたよたと、春風に吹かれながら歩いてみるのは悪くないゾ。




 ということで、南武線・稲田堤駅、ここはすでにして川崎市。9時半ごろ南の丘陵へ向かう。丘陵の麓に神社が仰山あるから、暇なんだし、そこを巡ってみようと思う。坂の途中に薬師堂があった。県指定無形文化財の獅子舞が伝承され、8月に奉納される旨の看板が出ている。境内に土俵もある。近所のおじさんたちが何か作業中。


                             薬師堂保存の獅子頭




 丘陵のてっぺんあたりまで登って道に迷い、通りがかりの女子高校生に聞いて、彼女がスマホで調べてくれて(今どきのJkは思いのほか親切)、ようやく神社が並んでいる一角にたどり着いた。「玉林寺」狭い境内だが、掃き清められて清々しい。「福昌寺」境内に梅が咲いていた。「法泉寺」立派な門を持つおおきな寺。以上3カ寺。


 

         玉林寺                      福昌寺

 

        法泉寺・門                   法泉寺



 
これにてお寺巡り終了(何のためだか!)。丘陵の裾を用水路が巡り、それを辿って三沢川に出た。両岸の遊歩道がよく整備されている。少し前を、体を触れ合わんばかりに歩く中高年の男女、ご夫婦かなあ、仲の良いご夫婦というものがこの世にあるもんだなあ!!





 丘陵の麓に湧水あり。細い管を通ってざばざば流れ出ている。よほど旨い水なのか、水汲みの人あとを絶たず。丘陵に穴が穿たれ、その前にちょっと手ごわそうな顔の弁才天がこっちを睨んでいた。穴の奥行きは2mぐらい、ちょろちょろ水が滲み出している。


 こういう場所はちょっといいなと思う。高度成長期、こんな場所がどれほど潰れてしまったか、などと考える。ま、あの当時は住宅が必要だったのだから、仕方ないことではあるけれど、長く伝えられた場所は大切にしないといけないね。





 湧き水の後ろの崖道を、うんこらしょっと登って穴沢天神社。なんだかさっきの弁天様の後ろの穴を思い起こさせるような名前、何らかの関係があるんだろうな。しかしこれは、小さいけれど立派な社殿だ。千木が高々と上がり鰹木が並んでいる。


 2月3日は、昔のアイドルだった可愛い女性(名前忘れた)が豆をまきに来る、と看板が出ている。ここにも獅子舞の奉納について稲城市教育委員会の説明板があった。先ほどの薬師堂も獅子舞だったから、この辺り一帯は獅子舞が盛んなんだナ。





 坂道を下って京王線・よみうりランド駅前。お客を運ぶロープウエイが、裏の丘陵を登っていく。丘陵の向こう、川崎市側によみうりランドがあるのだが、とんと訪れたことはない。いったい何があるのだろう。




 駅の西側にも丘陵が迫っていて、その麓に古びた禅寺、妙覚寺がある。青い梅の蕾が膨らんでいた。境内には、筆塚(穴沢天神にも玉林寺にもあったナ)、それを守る閻魔さん、稲城市一番の大きさの板碑などがある。


 





 この寺の裏側、丘陵の谷間に墓地がある。上の方に登っていくと、斜面にびっしりと墓石や石地蔵が立ち並んでいた。同じ形の墓石また墓石、地蔵また地蔵、こ、これはしたり! 墓石に霊が宿るとするならば、一体何百の霊がこっちを向いているのだろう。


 帰宅して少し調べたところ、これは第二次大戦末期に、谷中辺りから引っ越してきた無縁仏の墓石群、という説明を見つけた。先ほど立ち寄った妙覚寺の好意により実現した、とある。それを行ったのは、民間の一組織であるらしいけれど、この大量の墓石群といい、戦争末期の運搬といい、いずれも俄かには信じがたいことだ。


 信じがたいことだが、現にあるものは信じるしか手がない。墓石の文字を見てみると、江戸時代の元号のものが結構多い。墓石の形もその時代時代による変遷もあるようだ。それを丹念に調べみたら面白いかも知れないナ。(だが、面倒だからやらないね)


 





 さて、麓に下って、三沢川の近くで蕎麦屋を見っけ。コンビニ握り飯を背負っているのだけれど、蕎麦屋となれば入るに如かず。店内はゆったりとした配置で、半分ぐらい席が埋まっていた。注文は例によって例の如し。盛り蕎麦と日本酒1合。


 日本酒は、注ぎこぼし方式にあらずして、大き目コップに正一合、大辛口と銘打って冷たい美酒が快く喉を通る。多少疲れている上の昼酒、たちまちホンワカとなった。蕎麦は、そうだな、少し硬い。腰があるというより、硬いと感じられる。


 今流行りのグルメというやつじゃないから、日本酒の味も、蕎麦の味も全く自己流の判断で味わう。その日そのときでどうも味覚も違って感じられるらしい。蕎麦をずずッっと啜っちゃあ、酒をぐびり。春の日の昼下がりの時間を惜しむ如くにして、蕎麦屋の時間はゆるゆると過ぎていく。




・・・・・・つづく

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