木の葉散る音さえ大き森の中

時として森の中を歩くことがある。
山は、しんどくて到底登れないけれど、ちょっとした森なんかであれば歩ける。そんなときに葉擦れの音なのか、かさかさという乾いた音がばかに大きく耳に響くことがある。周りがしんとして、目に映る景観も静寂なためかもしれない。
どちらかといえば、あまり人がいないところを歩くのが好きだ。なんだか大いに自由になれた気分になって、こころが解放されるように思う。だから都会の人混みと車混みが苦手で、たまに都内になど行くと体がこわばってしまう。
かといって、深山幽谷、人里遠く離れれば、これまた寂しくっていたたまれないだろうとも思う。早々に逃げ帰って来るに違いない。一体どっちなんだ、はっきりしろ、と言われそうだが、本音はどっちつかずのいい加減なところを好むらしい。
これをつらつら考えれば、たぶん根っこは肝っ玉の小さいチキン野郎なのだろう。どっちに居ても、おどおどおろおろ、気持ちが落ち着かないから厄介な性格だと思う。そんな厄介な性格を矯正することもしなかったので、これからも持ち続けるしかない。
だから、『極夜行』(角幡唯介)を読んだときは、ほんとに驚いた。極北のグリーンランドの、太陽が沈んだっきりの薄暗い原野を犬とたった二人、何か月も彷徨い歩くドキュメンタリー。地図もなく、自分のいる場所も定かならず、うすぼんやりした氷の世界。
人間はこんなすごいことが出来るのだ! と目からウロコどころか、世界観がひっくり返った思いがした。それを思えば、なあ~にが深山幽谷、寂しい、だなんてどの口で言えるものか。なので、あんまりモノ言わぬ方がよかろうと自覚した。
だが、モノ言わぬは腹ふくれる。
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