冬空の青を切り裂く飛行雲

どういうわけか、飛行雲を眺めるのが好きだ。
一点の銀色の粒のうしろに、絹糸のように細いひと筋がぐんぐん進んでいって、後ろの方がだんだん太い雲のようになる。その按配をずっと眺めていて飽きない。子供のように、ごくごく単純な神経の持ち主なのだろう、困ったもんである。
冬は上空が冷たい空気になるからなのかどうか、鮮やかに青空を切り取ってゆく飛行雲を見る。どこへ飛んでゆくんだろうなあ、とは思うが、眺めているのはひたすら飛行雲であって、飛行機そのものはゴマ粒みたいで老眼では見えない。
こころの目で眺めているのは、飛行機の行く先なのか、雲の出来具合なのか、どうも自分ながらはっきり分からないから、困ったもんである。なにしろ海外へは一歩たりとも踏み出していないという、今どき珍しい化石化した人間、飛行機の行く先が気になる。
ヨーロッパなんだろうか、それとも東南アジアなんだろうか、ヨーロッパとはどんなところなんだろう、東南アジアは、本で読めばエラク物価の安い楽園のようなところらしいが、現実はどうなんだろうか。妄想は果てしもなく広がるばかりで、とりとめもない。
そんなに妄想するなら、行けばいいじゃないか⁉ しかしなあ、飛行機代が高い、格安航空というのは、どうすれば手に入るんだろう。宿の予約はどうやればいいんだ。言葉もまるで通じないし、英語なんぞ爪の先ほども分からない。
こう考えれば、なんともはや、面倒くさい。つまり結論は、海外などに行く能力を持っていない、子供のような年寄りなんだなあ、と満場一致で決定した。憧れは憧れのまま、ほっておくしかない、ということになった。困ったもんである。
飛行雲の先には、なにがある。
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