武甲山背にして広し芝桜

秩父は不思議なところだ。
第一に、ぐんにゃりとひん曲がった岩などが掘り出さている。そればかりじゃなくて、川っぷちの地層に重々と積み重なった石灰岩の堆積も見えるし、河原の岩に軽自動車がすっぽり落ち込むほどの丸い穴が開いていたり、ともかく地質学的にへんてこりんな場所だ。
第二の不思議は、古っる~い時代からすでに名の通った場所であるらしい。山に囲まれた小さな盆地なのになんでだろう。そういえば秩父宮という、やんごとなきお方の名前にもなっている。全国に地名は死ぬほどあるが、宮様のお名前になっているのはそう多くはない。
そして観音堂がいっぱいあって有名な観光地であるが、しかぁし、秩父は好きである。なにがいいかと言えば、田舎だからいい。実にまあ好ましい田舎だ。街中からひょいっと抜け出れば、細い道がずっと続いて、木々や畑が美しく広がっている。
その道を、ぽくらぽくら歩いていると、なんとも言えないほど心が和んでくる。ひょっとして、このまま帰らずにずっとずっと歩いていてもいいくらいだ。歩き疲れたら近くの観音堂に立ち寄って、羅漢様のおどけた顔を見ていれば、また元気が出る。
もう少し近くだったらちょくちょく行きたい。そして彷徨うように、あっちに行ったりこっちに戻ったりしたい。残念なことに片道(電車でも車でも)2時間ぐらいかかるから、そうそう、ちょっくら、というほど簡単には行けない。
それでも願わくば、このままそっと田舎のまま佇んでほしい。が、地元としてはそうはいかないんだろうなあ。最近は若え衆を引き付けようと、「ジオグラビティパーク秩父」などという、完璧に舌を噛みそうな施設などもできているようだ。困ったことである。
秩父は永遠に田舎です、がいいのになあ。
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