春めいて行き交う人はほほえみに

また多摩の古代を訪ねることとなった。
何回目になるのか、でもまあ、季節が違えば目にする景色は変わって、それなりに楽しい。今回は凍てついていた空気が急激に上昇して、まるで春が来たかと思われるような日和になり、たぶん、よほど日頃のココロガケがよかったのだろう。
巡ってきたのはいつもと同じで、「古代官道跡」「国分寺跡」「国府跡」など、代り映えしないが、梅が思いっきり枝を伸ばして咲いていたり、草が青み始めていたり、マンサクのへんてこりんな花を見つけたり、風景が違って面白かった。
そんな春めいた日なので、通りを行き交う人々の明るい笑顔がはじけていた。苦虫を36匹ほど嚙み潰したような表情の人は見当たらない。みんな穏やかな眼差しで白い頬を暖かい風にさらして、ぐっと前を見て歩いている。
なかんづく、下校する女子中学生が美しい髪を風になぶらせて、若いうなじを見せながら
笑いさざめき、軽やかに歩いていくさまが印象的であった。人の世のほんとの苦労にまだ縁遠いような顔をして、それでいいのだけれど、彼らはまさに青春ど真ん中だ。
巡り歩いている古代遺跡の、その時代に生きた人々もまた、春ともなれば同じ表情で歩いていたに違いない。周りを囲む事物はがらりと変わっただろうが、同じ人だし、ひょっとするとご先祖様だったかもしれないのだから、思いは今と何ら変わらない。
誰もみな、弾けるような笑顔で、梅の花が咲き始めた古代の官道を歩き、明るい陽ざしに輝く国分寺の境内を行き交い、温かい日が昇る国庁で天朝の儀式を行い、そうして今生きてあることを、こころの底から慈しんでいたのではないだろうか。
古代の人々がここまでずっと繋がってきた。
短い動画 「古代を訪ねて」(BGM・キャプション付き)
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