たまたま日記

たまにしか書かないに日記         遊びをせんとやうまれけむ   戯れせんとや・・・・

居酒屋で



 居酒というのは酒屋の店先で飲むことだ、ということを遅ればせながら最近知った。


 それがだんだん定着して居酒屋になったらしいが、近頃はチェーン店が地衣類の如くどこにでもはびこってきて、地元のそれぞれに個性的な赤ちょうちんを駆逐してしまった。残ね~~ん、悲しい!


 このチェーン店は、一見それぞれ個性があるように見えるが、よくよく見ると何処も同じような造りで同じような酒と食い物を出し、アルバイトの女の子がたどたどしく注文を聞いたりするのもどこも同じ、はなはだ以て面白くない。


 一方、コンビニもどこへでもはびこってきた。そして個性ある総菜屋さん、八百屋さん、その他もろもろの個人商店のシャッターを閉めさせてしまい、どこへ行っても、どのコンビニもみ~~んな同じ顔、うんざりだよねえ。


 なんだか日本の、あらゆる街角が一斉にローラーで押しつぶされてしまい、扁平で没個性の顔ばかりになってしまった、てなことを、立ち飲み酒場で隣の見ず知らずの若え衆に話したら、選択の幅が広がったてことですよ、と言いやがった。・・・ぎっちょん!






 閑話休題、居酒屋の話だった。その居酒屋は駅から3分ほど離れた路地の奥の片隅に隠れるようにある。六畳一間ぐらいの広さの、カウンターだけの店で、60代ぐらいの婆さんが一人でやっている。カウンターの上に婆さん手作りの料理が数品並んでいる。


 いつも思うのだが、この場合この婆さんを何と呼んだらいいのだろうか? まさか面と向かって、婆さん、とはなんぼ何でも言えない。かといって、ママなんてえのは、バーじゃあるまいし、ましてやいい年をぶっこいた爺いが言えたもんじゃない。女将、というのはどうか、まあ旅館じゃないしなあ。


 勘定がめんどくさいのか、なんでもかんでも1品、500円だ。いまどき貴重に安い。サケはビール、日本酒、焼酎、ウイスキーが置いてある。どれも1杯500円! 女の子が飲むような、おぞましいような色の飲み物はない。


 いつ行っても老紳士がひとり、カウンターの決まった場所に座っている。聞いてみたら、毎日来るという。そうして晩酌を楽しむが如く、静かに飲んでいる。たまにほかの客もいることがあるが、おおむね老人ばかりで若え連中を見たことがない。


 ここで日本酒をちびちびやっていると、大変こころ(こころ、っていったいなんだ?)が落ち着いてくる。固まって冷えたような、こころがとろとろと溶けだしていくような気分になる。静かで、くだんの老紳士も他の客も至って寡黙だし、チェーン店居酒屋のような、ガサガサした雰囲気はない。


 ただ困るのは、こっちがある程度酔ってくると誰かと話がしたくなることだ。生来あんぽんたんのバカだから、何を話すか分かったもんじゃない。大いに顰蹙を買うに決まっているから他のお客に話しかけるのは、厳に慎むべきなのだ。


 酔ってくるといっても、たかだか3合ほどでそうなるから至って下戸なのだが、これは持って生まれたものだから如何ともしがたい。吉田健一などは朝から飲み続けて夕方ごろには1升だそうだ。もしそんな真似をすれば、体が空中分解をしてしまうだろうなあ。



ともあれこういう居酒屋は健在でいてほしい。


コンビニとチェーン店だけの世の中は


見たくないような気がする。

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