人生を山に返す
「やまみほ」さんのブログを読んでいたら、思い出した。
「やまみほ」さんのブログ 「東秩父・花桃の里」
昔むかし観た、NHKドキュメンタリー「花のあとさき」。
秩父の山奥、木々がまばらに見える中腹に屋根が見え、そこに数軒の家があり人々が生活している。その暮らしを18年も追いかけた記録。
「ムツ婆さん」とその夫が年老いて、畑に花を植えて山に返したい、と一株ひとかぶ、花の苗木を畑に植えていく姿と、山の日々が語られていく。
山の中の畑、小さくて、石ころだらけで、急斜面で。しかし考えてみれば、ここに暮らす人たちにとって、この畑が財産のすべて、生活のすべてであったろう。そのすべてである畑を山に返す、しかもこの畑は、自分たちの労働だけで木を切り、藪を払い、そのようにして営々と切り開いてきた汗と苦労の結晶だったはずだ。
そんな畑を山に返す。お礼に花を植えて。
*ムツ婆さんも夫も、そしてこの山に生きてきた人も、これがテレビで放送され、世の人々が注目するなど、爪の先ほども思わなかっただろう。そんな思いは微塵もなく、ただ人生の終焉に臨んで、人生を支えてくれた畑を山に返す、このことだけを思ったに違いない。*
やがて夫が亡くなり「ムツ婆さん」は一人になり、それから集落の人たちが一人一人亡くなり、また町場に移りして、「ムツ婆さん」も亡くなって、いま集落には誰もいない。
誰もいない山あいに春、花が咲き乱れ、自然はなにごともなかったかのように四季を送り迎える。
*この山の中で人生を全うした人たちの、清らかで清々しい心情を思う。*
(公式サイトより: https://hana-ato.espace-sarou.com/ )
この物語は、映画にもなったようだけれど観ていない。
今想いだすドキュメンタリーの一コマ、二コマ。
その面影を大事に胸にしまっておきたい。