たまたま日記

たまにしか書かないに日記         遊びをせんとやうまれけむ   戯れせんとや・・・・

桜花酔夢の宴


 桜が咲いた、と宣言されたからには、是が非でも花見だ。



 桜の下で我がもの顔で酔っぱらう、などというのはセコイ、と思っていたので、じつはここ何十年も花見などしたことがなかった。だが、連絡事項もこれあり、節を曲げて花見の宴を行うこととした。呑兵衛仲間4人に言うと「大賛成!」の声が挙がった。



 忘日午前11時、武蔵小金井駅に集合、早速買い出しにかかる。駅前のスーパーに潜り込んで、何はともあれ酒類。「これが旨いんだ」と、なにやら怪しげな缶入りの日本酒2個を誰かが持ってきた。さらにもっと怪しげなウイスキーの中瓶1個、まともな越乃寒梅4合。
 腹が減るから、細い海苔巻きのパックを4個ぐらい、肉の煮込みのようなもの1パック、焼き鳥の串ひとり前2本ずつ・・・余計なことだけど、近頃焼き鳥といえば、ほんとに鶏肉、昔ながらの豚モツはどこにもない! こんなことでいいのか、日本!
 男ばかりだから、旨いのか不味いのか、怪しげなものばかり買い込んで、胸を張って勇躍店を後にした。そして麗らかな陽ざしの中を、とぼとぼと小金井公園を目指す。都心の桜が開花したからといって、多摩の桜までがほんとに咲いているのだろうか。




 公園に入ってみたら、染井吉野はちょぼちょぼと咲いていることは咲いていた。名前の知らない鮮やかな赤い桜は満開、まあ、不風流なおやじ集団だから、花はどうでもいい。宴を挙行して飲んだくれていれば幸せなんである。
 草地にシートを敷いて、いそいそと買ったものを取り出す。焼き鳥は冷めていたけれど案外に旨かった。怪しの缶入日本酒を飲んでみたが、甘ったるい。やはり越乃寒梅が無難だ。どうでもいいような話に興じているうちに、だんだん回ってきた。


 回ってきて話があっちこっちにばらけるころ、西日本日本海側への(大)旅行の話を持ち出す。まあ、行ってみてもいいし、行かなくてもいいし、というようななんとも纏まらないうちに話は空中分解して、うらうらと日が照る空のかなたへ消えていった。
 缶入り日本酒がなくなって、つぎに怪しのウイスキーとなり、飲んだ奴が急激に怪しくなっていく。桜(ソメイヨシノ)は、言ってみれば三分咲き、そのちらほらと枝に着いた眺めが儚げで味がある。なんでも盛りなるを以て最上とするなかれ、だ。




 5,6メートル離れた隣のグループは、若いお母さん方とその子供たち、総勢20人ほど。幼稚園児ぐらいの子供たちが、有無を言わさず可愛い。こっちの爺ちゃたちは酔眼を細め、蕩けるような顔で、飛び回る元気な姿を眺めている。
 親子でドッジボールを始めだした。子供たちはたちまち夢中になって、自分たちだけで続けている。そこへ酔った爺ちゃ達が、カワイイだのメンコイだの、盛んに囃し立てるものだから、子供たちもこっちに関心を持ってきた。
 その中の、元気な女の子(トトロのメイに雰囲気が似ている)が、ととととっとこちらに走ってきて爺ちゃの肩をポンと叩き、そのまま、たたたっと向こうに走り抜けた。さあ、爺ちゃの喜びようったらない。メイがまたとととっと走ってくると、今度はハイタッチ。それを何度も繰り返し、メイは何人もの爺ちゃ達をすっかり手玉に取ってしまった。




 隣の子供たちと若いお母さんが帰り、陽が傾きはじめたころ、こちらも酒盛りを切り上げたが、怪しのウイスキーをぐいらぐいらやらかした連中が、立ち上がってもぐらぐらしている。バスを待って武蔵小金井駅に戻った。
 駅に帰ってきたが、まだぐらぐらしている。かくなる上はカラオケで一休みだろう、というのがいて、カラオケ屋の部屋になだれ込み、ぐらぐらの軽度のものが、知らない歌をがあがあガナリ立て、ぐらぐら重傷者はお休み中。 
 そのうちに睡眠連中が目を覚まし、目をそむけたくなるほど全員音痴だが、そんなことを構っていられるものではない。声よ裂けよとばかり、張り上げ、怒鳴り、雄たけぶ。こうして体の奥に座っていたもやもやをすっかり表に吐き出してしまい、後味はすっきりである。




 かくの如くして、桜花酔夢は無事終わった。
 これからは、このように1年に一度大騒ぎの宴を張ることに決めた。
 花よし、子供らよし、歌もよし。

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