田螺ぶつぶつ
東京のコロナば、ちっとも減らねえでがんす。
ほいでまあ、どうしたもんだか、こっちも埒が明かねえで困っちょるとですよ。お上はもう、「んなこたあ構ったこんじゃねえだから、どこへでも行きたいとこへ行けばええだ、銭も出すでよ」なんちゅうこと言いよるがなあ、コロナで死ぬなあこっちだでなあ。
遊びに行きてえだども、コロナば怖え、それよりみんなの目が怖え。
うっかり粗忽ぶっこいて、遊び格好ではあ電車ばあ乗っとったら、ぎろっと睨みつけられんじゃあんめえかと、そればあ心ぺぇで安気の暇もねえ。それだば電車にゃあ乗らんでいまちっとばっか我慢すべえと思うだよ。
電車さ乗らんば、近場ばっかりへろへろ歩くちゅうことになるだ。
ところがほれ、今までじゃあ脳みそぶっくれるほど暑うて暑うて、どうもこうもならんじゃったに、仕方ねえで朝早ように、歯も面も洗いもせんで出かけてみたったけが、暑うなる前えに帰らんばどうもなんねえだんで、時間が短ええ。
時間が短ええ、とどのつまりが同じとこばあ、ぐるぐる回るちゅう羽目になっちまって、ワヤだがや。そんでも毎日々々同じとこ廻ってる人もあるもんだで、見知った顔をよく見かけた。エライもんだや、毎日同じとこ廻って厭きないだら?
そうこうしてるうち、空がごろっと変わっちまっただ。
空あ高くなって雲あ薄くなった。道っぱたの夏草、はあ延びるなあ止めて花あは実になり、淡い色の季節の花が目立つようになってきた。誰あれが教えたもんでもねえが、草だの木だのは、なにすればええだか、みんな知ってんだね。
ここんとこ雨ばあ降りくさって面白くねえだが、もうちっとしたら、空が澄んで暑気もなくなって、風がキンモクセイの香りをどこかから運んできて、ええ季節になるんでねえか。そうなると、一日一日が過ぎていくのが惜しいような気もするがな。
さ~て、コロナがもうちっと減って、空が澄んだ日にオラもどこかに出かけべえと思うだよ。あ~~に、どこだってええだ。出かけた先であにするちゅうこともねえで、ただそこいらを歩くちゅうだけのこんだ。なるべく人の少ねえ田舎の細道がええ、そういう道をぽこらぽこらと歩くだ。あんの目的もねえだしあんにもすることもねえだ。