同居人の不在
このところ同居人の姿が見えなくなった。
夏のころは、濡れ縁に座ってぼんやりしていると、ちょろちょろと姿を見せ上目遣いに一瞬の一瞥をかまして、そして急ぎ足で草の陰に隠れたものだったが、だんだん寒くなりかけて、とんと姿を見せなくなったようだ。
どうも二匹いるらしくて、道路の側の植栽の下をちょろちょろする、至って小さな5cmほどの生まれたてのような彼と、そして濡れ縁の近くの草むらの、少し大きめの15cmほどの彼。この二人が兄弟のように思えるけれど、全く赤の他人なのかもしれない。
といって、彼らの母親ないし父親らしきものの姿はどこにも見当たらないようだから、この二人はどこかから侵入して、家主に断りもなしに同居を決め込んでる、実は太ぇやつなのかもしれないが、別にこれといった悪さもしないようだから、家賃も取らずにいる。
彼らが姿を現した時にちょこっと見ると、細長い胴体の背中がぬめッとした青みがかった色で、胴体から生えたごく短い、そして小さい足を、さささーと凄い速さで動かし、一瞬止まって辺りを一瞥して、見た目にはちょろちょろという感じで草の下などに潜り込む。
賄はしていないから自分で何かを食して、それでもって生きているらしい。しかし何を食っているのか想像もできない。たぶん小さな小さな蚊みたいなものをパクリムシャムシャとやっているのではないかと思う。
それでもって、彼らがカ~イイかといえば、顔つきがちょっとばかり怪異のためカ~イクはない。けれども同類とは言え、蛇の助のように傍若無人の体をのたうち、傲岸無知の顔つきの奴に比べれば、少々愛おしく思わないでもない。
来春、彼らはまた姿を見せるのだろうか?
それとも、たった一年のはかない寿命ののだろうか?
姿を見せて二匹とも、幼児が少年に、少年が青年に、それぞれ成長しているだろうか?
今からそれを楽しみに待っている。